私立大学の応援団員が上級生から暴行を受けて死亡した事故について、学校法人の使用者責任が認められた事例

学校法人の使用者責任

私立学校において事故が発生した場合、被用者である教員等に故意もしくは過失があるときには、学校法人に対しても損害賠償請求をすることができます。

民法715条1項は、他人に使用されている者(被用者)がその他人(使用者)の事業の執行について第三者(被害者)に損害を加えた場合、使用者や使用者に代わって事業を監督する立場にある者(代理監督者)に、その損害を賠償する責任を負わせています。この規定によって負う責任のことを「使用者責任」と言います。

学校の使用者責任の有無が問題になった事例

事案の概要

私立大学の非公認の応援団の団員が、応援団所属の上級生から気合入れの名の元に暴行を受け、急性硬膜下血腫による脳圧迫により死亡したという事件について、最高裁は、以下のような理由から学校法人の使用者責任を認めました。

①応援団は、大学構内の建物の一部を大学に無断で占拠して部室として使用しており、大学はこれを黙認していました。校内で練習をしており、学長の挨拶文が掲載されたパンフレットを用意して、練習の成果を学内で発表していました。大学の非常勤講師が応援団相談役に就任して、その後学内で開催された講演会の警護を大学当局が応援団に依頼したこともありました。

②応援団においては、気合入れの名の下に、上級生から下級生に対する、顔を殴る、腹部を蹴る、竹刀で臀部を殴るなどの度を越した暴力行為が恒常的に公然と行われており、大学当局はこれを十分に承知していました。

③被害者の団員が入団した以降、大学当局には、応援団に入団した新入生の退団希望を認めてもらえないなどの苦情が持ち込まれ、顔面打撲の診断書を示す者さえいたので、大学の各部長を構成員とする執行部会議は、自由な退団を認めるように応援団を指導することを決定しました。学生部長が応援団の幹部である上級生らにその旨を伝え善処を求めたが、右幹部らは、殴ることも練習の一部で暴力ではないと弁明し、その論は社会的に通用しないという学生部長の説得にも応じませんでした。

④その後も応援団は気合入れを伴う練習を続け、大学当局側は直接これを是正させる措置を取らないまま、本件事故が発生しました。

裁判所の判断

裁判所は、以上のような事実関係においては、大学の執行部会議、教授会等は、応援大に対し、暴力行為をやめるように強く要請、指導し、応援団がこれに従わない場合には、部室として使用されれている建物の明渡しを求め、あるいは練習のための学内施設の使用を禁止し、応援団幹部に対する懲罰処分(停学、退学など)を行うなどの具体的措置を採る義務があったのに、これを怠った過失がある」として、大学側の責任を認めました。

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