柔道部の生徒がプロレス技をかけられ、頸髄損傷の傷害を負った事故につき、学校側の安全配慮義務違反が認められた事例

事案の概要

被告高校の柔道部の練習場において、練習前に部室の雑巾掛けをしていた被害者の部員が、上級生の柔道部部員がかけたプロレス技によって頭部から床に落下し、頸髄損傷の傷害を負い、四肢麻痺等の後遺障害が生じた事案

判決の内容

被告高校の管理者である校長や部活動の顧問教諭は、被害者に対し、安全を図り、特に、心身に影響する何らかの事故発生の危険性を具体的に予見することが可能であるような場合には、事故の発生を未然に防止するために監視、指導を強化する等の適切な措置を講じるべき安全保護義務がある。

柔道部における部活動は、その性質上、格技である柔道を習得しようとして柔道部に所属する部員が、畳、マット等により、格技取得のための設備が整っている本件部室に集合し、格技の練習を行うのであるから、指定された練習時間の前後の時間帯に、慣行として顧問の教諭の指示によって行われることになっている本件部室及び設備の清掃等の行為もここにいう部活動に含まれる。

プロレスごっこをして様々なプロレス技を掛け合うことについて、柔道部の顧問教諭自身が危険であるから禁止すべきであると認識していた。プロレスごっこは事故発生の前年2学期頃から、複数の柔道部員によって練習時間の前後に行われ、事故発生当時もほぼ毎日のように行われていた。

このような柔道部における部活動の状態は、柔道部員の心身に何らかの事故発生の危険性を具体的に予見することが可能な場合に当たる。

被告高校及び顧問教諭としては、本件事故の発生を未然に防止するために監視、指導を強化する等の適切な措置を講じるべき義務があった。

それにも関わらず、被告高校及び顧問教諭は、プロレスごっこが練習時間の前後に行われていた実態を認識・把握せず、柔道部員に対し、練習時間帯の前後にプロレス技なをふざけてかける行為の危険性について指摘し、一律に厳しく禁止したり、見回りを強化したりするなどの対策を講じる措置を取ったことはなかった。被告高校には、被害者に対する安全保護義務違反があったというべき。

ポイント

上記の事例では、顧問教諭の指示により、部活の前後の時間に、慣行として部室等の清掃が行われていたため、部活の前後の時間帯であっても部活動における活動に当たると判断されています。

そして、上記の事例では、事故発生の前年から柔道部員同士でプロレス技を掛け合うようになり、事故発生当時にはそれが常態化していたことから、柔道部員の心身に影響する何らかの事故発生の危険性が生じており、それが具体的に予見可能であったと判断されています。

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