水泳授業中にプールの底で頭部を打ち、頸髄損傷等の重傷を負った事故につき、損害賠償請求が認容された事例

事案の概要

中学三年生の被害者が体育の水泳授業中プールの底で頭部をうち、頸髄損傷等の重傷を負った事故につき、プールの設置管理に瑕疵があるとされた事例です。

損害賠償の範囲

①逸失利益:8000万円

被害者は事故当時健康な14歳の男子中学生であり、満18歳以降67歳まで就労可能であったと予想されるところ、本件事故により労働能力を100パーセント喪失したから、その逸失利益は、賃金センサスの男子労働者学歴計の平均年収額を基礎に、ライプニッツ方式によって中間利息を控除して本件事故当時の原価として算定するのが相当

②近親者付添看護費:約3500万円

後遺障害の程度及び生活状況によれば、事故時から退院に至るまでは近親者の付添看護を常時要したし、退院以降将来にわたっても、介護を常時要すると認められるから、付添看護日及び介護費として1日あたり5000円を相当とし、その期間を事故当時の平均余命である62年間として、ライプニッツ方式によって中間利息を控除して本件事故当時の原価として算定する

③療養雑費:約690万円

後遺障害の程度及び生活状況によれば、本件事故時から退院に至るまでの入院期間において入院雑費を要するとともに、退院後将来にわたっても通院等の療養のために通常の健常者には要しない種々の雑費が必要であると認められ、その額は1日あたり1000円を相当とし、事故当時の平均余命の62年かんに要する療養雑費をライプニッツ方式によって中間利息を控除して本件事故時の原価として算定する。

④自宅改造費:約290万円

療養のために、自宅の床フローリング等の改装工事費用や車椅子及び特殊ベッドの購入費用を要しているいるところ、本件事故と相当因果関係に立つ損害と認められる。

⑤慰謝料:2400万円

後遺障害の程度が重篤であること、若年で本件事故に遭遇したこと、本件事故後約1年7カ月の長期にわたって入院生活を余儀なくされ、退院後も現在に至るまでリハビリテーションのために通院を継続していることを考慮すると、原告の精神的苦痛を慰謝するには2400万円をもって相当とする。

⑥弁護士費用:800万円

⑦両親の慰謝料:各300万円

本件事故により重大な後遺障害を負ったことにより、その両親として日々辛苦を味わっているその精神的負担の大きさに照らし、慰謝料としてはかく300万円が相当

⑧両親の弁護士費用:各30万円

ポイント

治療費・付添費・交通費などの積極損害は、事故と相当因果関係にある支出であれば、損害に含まれます。

将来の介護費・雑費については、要介護状態にあり、将来においても介護・付き添いの必要が生じている場合に損害として認められます。

逸失利益については、基礎収入(≒事故前の収入)×労働能力喪失率×稼働可能年数という式によって産出されます。学生は無収入であることがほとんどですので、賃金センサス等を用いて就労した場合の収入を想定して基礎収入を認定します。労働能力喪失率については、厚生労働省労働局の通牒である労働能力喪失率表を参考に、後遺症の症状に照らして算出されます。逸失利益については、将来得られるはずであったものが得られなくなった、という損害であり、将来得られるはずであったものを賠償時点で予め一括してもらうことになることから、その分、運用によって得られる利息というものがあります(中間利息)。この中間利息を控除する方法として、一般的にはライプニッツ係数が用いられます。ライプニッツ係数については、2020年4月に改正民法が施行されるため、事故発生の時期が改正民法施行後のものである場合には、計算が異なりますので注意が必要です。

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